年賀状が6枚戻ってきた

郵便受けをのぞいてびっくりした。

仙台から、熊本から、埼玉から、続々と年賀状が戻ってきている。住所に尋ねあたらないらしい。そんなにみんなそろって引っ越したのか。全然教えてくれないじゃないか。これがニューノーマルってやつ?と思ったら僕がおととしの住所録で年賀状を作っていただけだった。ひどい。

6枚の年賀状を並べて肩を落とす。いっそもう1枚戻ってきて、7枚揃ってほしい。その瞬間辺りは暗くなり、 7枚の年賀状が光り輝いたかと思うと、龍が立ち上るのだ。ひとつだけ願いを叶えるという龍に、年賀状を正しい住所に送り届けてほしいと願うんだ。「どれを?」龍が聞く。どれを…? マジか1枚しか送ってくれないのか。願いはひとつだけだからな。ちょっと待ってね、誰にしようか、遠くの人に送ったほうがいいのかな。いやこの人のほうがしばらく会ってないから…。

「ちょっと待ったぞ」

願いを叶えた龍が消える。7枚の年賀状が残される。僕の筆跡で「お元気ですか?」と書いてある。全く元気ではない。あけましておめでとうが届かない。住所録を最新にしてくださいってお願いすればよかった。