僕のスマホを持ち去った人物を新大久保から池袋まで追った

JR池袋駅のトイレにiPhoneを置き忘れた。あっ!と気づいて戻ったが無くなっている。

 

その間、たった2,3分。最寄りの改札に聞いても、遺失物取り扱い窓口に聞いても届いていない。公衆電話から電話をかけると留守電。取られた。誰かが僕のiPhoneを持ち去っている。

iPhoneを探す」の出番だ。紛失したiPhoneの電源が入っていれば、遠隔操作で端末をロックし、iPhoneの現在地を地図に表示して追跡することができる。「iPhoneを探す」を使うにはネット接続が必要だ。Macを持っていたが、ネット接続はいつもiPhoneテザリングで行っていた。そのiPhoneが無くなっている。

マックやスタバで無料のWi-Fiに接続してもいいが、なるべく駅を離れたくない。仕方ない。その場で公衆Wi-FiであるWi2プレミアムを申し込む。「Wi2 300 ワンタイムプラン」。6時間で350円(税込)。個人情報やクレカ番号を入力して登録完了。Wi-Fiにつながった。

iCloudにアクセスして、「iPhoneを探す」を開く。iPhoneの所在を確認。オフライン。電源が切られている。なるほど。

iPhoneを探す」では、端末を紛失モードにすると遠隔操作でホーム画面に任意のメッセージを表示することができる。端末がオフラインでも設定でき、電源が入りオンラインになった段階で紛失モードが発動する。いつ電源が入るかわからない。メッセージを登録しておく。「このiPhoneは紛失したものです。(メールアドレス)に連絡して下さい」とした。メールアドレスは普段あまり使っていない転送用のもの。善良な人が拾う可能性もあるので、この泥棒が!という言い方は避ける。連絡先(家電など)の電話番号を表示することもできるが、個人情報であり悪用の危険もあるので利用は控えた。

端末の電源が入った時点でMacに通知するよう「iPhoneを探す」を設定すると、もうすることがない。電源が入る可能性に賭ける。帰路につきながら、駅に到着するたびWi-Fiに接続して様子を見る。昼食は立ち食い蕎麦にした。完全に紛失したらどんな手続きが必要でいくらかかるのか、不安がずっと消えない。

 

変化があったのは紛失から2時間後。電源が入った。

 

そのとき僕は乗り換え駅のホームにいた。ベンチに座りMacからTwitterを見たりして、iPhoneを紛失した虚しさを虚しさで埋めていた。通知が入る。「iPhoneの電源が入りました」。すぐに「iPhoneを探す」を開く。iPhoneはどこだ。現在地を示す緑のポイント。マップがなかなか読み込まれない。どこにいる。

新大久保だ。

iPhoneは池袋から新大久保に移動していた。山手線で池袋から3駅南に位置する場所。何度もリロードする。新大久保駅から200mくらいの場所から、新大久保駅の方向に移動している。スピードからすると徒歩だ。

新大久保駅に近づいたところで、もう一回メッセージを表示した。「このiPhoneは紛失したものです。新大久保の駅に届けて下さい」。遠隔操作でサウンドを鳴らすこともできるので、メッセージ表示と共に鳴らす。メッセージの表示を気づかせ、遠隔操作で位置を監視していることをアピールする。

紛失モードに入ると、電話の着信やアラーム、メール、LINEなどの通知は画面に表示されなくなる(iCloud: 紛失モードの使用)。MacからLINEをつなぎ、友人に現状を伝え、相談に乗ってもらう。このやりとりはiPhoneには表示されない。

スマホを持ち去った人物は、新大久保駅から山手線に乗ったようだ。緑のポイントがグンッ!と北上し、高田馬場を通り過ぎる。遠くに移動されてはまずい。目白を越え、池袋にさしかかる手前でもう一度メッセージ。池袋駅に着きましたか? 駅員に届けて下さい」。サウンドも一回鳴らす。しつこくサウンドを鳴らしたいが、面倒がられて捨てられたらやっかいだ。衝動を抑え、あくまで「メッセージの着信音」の位置づけに留める。

 

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緑のポイントは池袋に止まった。そのまま5分ほど経過する。池袋駅の改札は地下にあり、丸ノ内線有楽町線副都心線と地下鉄も走っている。地下でGPSが届かない可能性もある。地下鉄で移動するかもしれない。東武や西武に乗り換えるとどこまでも遠くに行ってしまう。頼むから池袋に留まってくれ。リロードを何度も繰り返しながら、じっと様子を見る。10分。15分。20分。動かない。

池袋に届けたのかもしれない。もしくは再びトイレに戻したか。そもそも移動の経路がおかしい。池袋でスマホを拾った人物が、2時間弱の間に新大久保におり、再び池袋に戻っている。目的がある移動だとすれば、スマホを元の場所に届けた可能性が高い。急いで池袋に向かうが、現在地からは30分以上かかる。生きた心地がしないとはこのことだ。

 

山手線で池袋駅についた。そのままホームで再びWi-Fiにつなぎ、現在地を確認する。iPhoneはまだ池袋にある。紛失したトイレを確認する。ない。最寄りの改札に事情を話す。裏に消える駅員。戻ってきて一言「免許証など身分を証明するものはありますか?」。僕のiPhoneだ!わー!わーーーー!!!

ホーム画面には「池袋駅に着きましたか?」のメッセージが表示され、紛失モードになっていた。指紋認証でロックを外し、本人のものであることを証明する。戻ってきたのだ。

駅員によると、iPhoneを届けた人物は50代の男性。トイレで拾ったという。その男性が持ち去った人物かもしれないし、あるいは持ち去った人物が元のトイレに置き、それを拾って届けてくれたのかもしれない。事情はわからないが、とにかく戻ってきてよかった。

 

PHSもケータイも一度も無くしたことがなかったから、持ち去られたとわかった瞬間は体中の毛という毛がざわっとした。今回iPhoneが戻ってきたのは本当にたまたまだ。見知らぬ第三者に所有物の運命を握られ、その行く末を遠くから監視するのは相当なストレスだった。帰宅後は仕事にならず、夜は早々に寝た。7時間半寝た。もうこんな思いはしたくないのでトイレから出るときは指さし確認しよう。「よーし!」とか言おう。