覚えてないけど楽しかった記憶だけある飲み会

目的の無い飲み会が一番楽しい。

円滑なコミュニケーションをお酒の力に頼るあまり、「目的」がある飲み会があるじゃないですか。人脈を広げるための懇親会があり、部下に仕事論を語りたい上司がいて、それこそ男女が出会いを目的した合コンがあるじゃないですか。

でも「目的」がある飲み会は、目的が達せられるがどうかが常に頭の中にある。久しぶりに集まった友人との飲み会だとしても、「久しぶりに会うのだから再会を楽しみたい」という目的がある。テーブルの端と端に離れて座っちゃって、なんか結局全然話せなかったな、みたいなのある。

そこで目的の無い飲み会である。いつもの面子、記念日でもなんでもない日、ほどほどの頻度、敷居が高すぎない店。ただただバカな話をして、あんなにゲラゲラ笑ったのに翌朝なんであんなに楽しかったのか全然覚えてない。そこには「楽しかった」という記憶しかない。楽しさに包まれたならだ。眼に映るすべてのことはメッセージだ。

そんなことを思いながら『酒の穴』を読んでいた。

酒の穴―酒をみつめる対話集

酒の穴―酒をみつめる対話集

 

スズキナオさんとパリッコさんの、酒をめぐる会話。外に椅子を出して好きなところで飲んだり、酒場を転々としたり、人生のアルコール濃度ってなんだろうと考えたり、死後の世界に自分の好きな店が集まった横丁が出ないかなと思いを馳せる。

二人が織りなす目的も意味もない会話はただただ楽しくて、翌朝になったら忘れてそうで、でも楽しかったことの記憶だけはある。それは確かにストロングでゼロで、強くて無だ。こんなお酒が飲みたいなぁと羨望の眼差しで見ちゃう。いいなぁいいなぁ。

 

お二人の会話の楽しさは、こちらの記事で味わえます。チェァリング楽しそう。

椅子さえあればどこでも酒場「チェアリング」とは!? - デイリーポータルZ