肉が焼けている現場から生中継

週末、カミさんの誕生日がめでたいので家族でご飯を食べに出かけた。行くつもりだったお店が1時間待ちも辞さぬほど混雑していて、正直舐めてましたすいませんでしたというハプニングもありつつ、ステーキハウスに流れ着いた。

席に案内されるまで待っていると、客席にオープンになった厨房で肉がジュウジュウ焼かれているのが見える。時折、滴り落ちた油から火の手があがる。セックスアピールならぬ肉アピールに、入店直後は子どもたちも「肉!」と興奮を隠せない様子だったが、すぐにさっき買ったばかりのMinecraftの攻略本を貪るように読んでた。エレベーターが作れるって!とかTNT爆弾が!とか言ってる。Minecraftは子ども達のほうがすっかり詳しくなって、もう何のゲームかさっぱりわからない。豚にエサをやったりジェットコースターを作ったりしている。なにがなにやらだ。いとうせいこうノーライフキング』みたいなことになってる。

で、席に案内され、メニューの焦げ茶色の占有率におののいていると、天井から吊されたモニターが目に入った。

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肉が焼かれている。

さっき厨房で焼いてた肉のライブ映像だ。いま座っている客席から厨房は見えないから、「厨房が見えなくて不安かもしれませんが、今もこうして肉を焼いております!」と安心をお届けしてるようだった。大丈夫ですよ知ってますよ。メニューに載っている肉の写真と、天井から生中継される肉の映像。二次元の肉に上下から挟まれていた。

肉に対する自己顕示欲の高さに怯むも、お店の売りなのだからこれくらいは仕方あるまい、とジュウジュウと肉が焼ける音(厨房は見えないけど音はバンバン聞こえる)に耳を傾け、改めてメニューを眺めようとすると、モニタの映像が切り替わった。

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サラダバーのライブ映像だった。

確かに、確かにこの店のサラダバーはすごかった。種類がめちゃめちゃ豊富な上に、ティラミスや生八つ橋まであった。サラダとはなにかという概念も壊れた。だが落ち着いてほしい。肉と野菜が頭上で交互に現れるのだ。知らない人がナスの揚げ浸しを取り分けていたりするのだ。落ち着いてほしい。これから食べる。食べるから。

このままドリンクバーでコーラとカルピスを混ぜている客や、レジでおつりを数えている店員や、料理を待っている僕の姿までうっかり映るかと思った。ちなみにコーラとカルピスを混ぜていたのはうちの小1息子だ。美味しいの?と聞いたら「あまい!」とニッコリ笑っていた。よかったね。 

ノーライフキング (河出文庫)

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