二段ベッドに寝るのが夢だった

ここ数日、二段ベッドに寝ている。

二段ベッドは子供部屋に置いてある。いつもは上段に娘9歳が、下段に息子6歳が寝ている。その息子6歳がインフルエンザになったのだ。看病のため、息子6歳はママと和室で寝ることになった。押し出しでパパが二段ベッド行きである。

考えてみれば、二段ベッドに寝るのは子供の頃の夢だった。ずっと布団で寝ていたので、まずベッドで寝ることに憧れがあった。そこに倍率ドンで二段のベッド。ハシゴで上下を行き来するのが秘密基地っぽいし、ドンキーコングっぽさもある。友達の家で二段ベッドを見るたびに、心の中で口笛がヒュ~と響いた。いいベッド持ってんじゃん。それは日常の中の非日常だった。

二段ベッドに憧れて、押し入れで寝ようとしたことがある。布団を全部出した後、1組だけ押し入れの上段に敷く。寝転がった状態での視点の高さは、床に寝たときより高く、立ったときより低い。いつもと違う視点で見下ろした部屋の光景が不思議だった。しかし、はたから見ればそれはただのドラえもんだった。

時は流れに流れて、40歳を越え、数日の間とはいえ二段ベッドに寝ることになるとは思わなかった。しかし、である。子供のころ憧れていたのは、どちらかと言えば上段のほう。だが、いま寝ているのは下段。でもいいのだ。下段でいいのだ。なぜなら、二段ベッドは、二段ベッドは……揺れるんですよ。

大人の体になって、二段ベッドの上段に寝るのは怖い。まず高い。中途半端に高い。リアルな高さが怖い。そして揺れる。思ったよりグラグラ揺れる。怖い。おちおち寝返りもできない。ハシゴは登るのはまだいいけど、降りるのはおっかなびっくりだ。及び腰だ。

大人になると叶うこともあるけど、失うものもある。そして妥協も覚える。二段ベッドの下段に寝ることで、子供のころの夢と折り合いをつけている。

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